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創業期に読む「NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方」

NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方

NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方

  • 作者: ジェイソンフリード,デイヴィッドハイネマイヤーハンソン,Jason Fried,David Heinemeier Hansson,久保美代子
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昨年末、転職の話を進めながら読んでいたのが彼らの名著だった。会社のスタンスを知るために必要な本だった。

blog.kaelae.la

一ヶ月くらい前に彼らの新刊が出て、やはり人生はいろんなタイミングが合うのだなと勝手に感じた。バイアスで目につきやすいだけだというのはわかっているが。

「これは良いから絶対読むんやで」って社内でも言われてたので先週末の京都旅行中に買った。創業期から考えておきたいことを経験を元に語られていて説得力があった。

これまでの働き方

基本的には無理しすぎず、詰め込むやり方だったように思う。

  • たくさんやれば仕事が終わる
  • とにかく目に付く仕事はなんでもやる

みたいなスタンスだったし、頭ではわかっていても、自分はそんなに器用に働けないんじゃないかなと感じていた。 特に創業期の会社に転職した今、自分が頑張るほど会社に影響するという感覚が強迫観念のようになっていた。

そういう気合い論みたいなものは間違っていないが、常に正しくもないというのをこの本は教えてくれたと思う。大きな組織ではすでにルールがあるから改めて感じることは少ないかもしれない。

気づき

カームカンパニー

カームカンパニーというキーワードが重要で、カーム=calmの翻訳は「穏やかな」と書かれていた。思い返してみると、ビジネスでは全て戦争用語で普段を活動を語られる。市場を「独占する」、ユーザーを「捕まえる」、「ターゲット」を明確にする、「戦力」になる人材、「ヘッドハンター」などなどあげたらキリがない。穏やかではないのだ。

エンジニアは開発しているときは静かに見えるが、社内では荒々しい言葉で目標やビジョンを掲げて士気を高める。そう、社員は戦士として見なされているのだ。この発想にまず驚いた。というより、ようやく知らされた。闘争本能は人間に根強く存在するのだと思った。穏やかになるにはどうしたらいいのだろうか、そういう興味が読み進めるうちに満たされていく本だった。

カームな会社にするにはカームの別な意味である「冷静さ」が必要だ。冷静に考えると、不要なこと、おかしなことってたくさんある。そういうものに気が付ける。

戦わない会社

ではどうやってカームにするのか?「ハッピーな不戦主義者」という章が面白かった。戦争用語をやめて、どういう思想を持てば良いのかたくさん書いてあった。

  • 市場のパーセンテージは無意味

今、市場の何パーセントですみたいなものは、ちゃんとお金を払ってもらって、会社を運用できていればどうでもいいという話。独占とかそんなことする必要はない。小さな経済圏でも儲かる会社はたくさんある。市場を作ってから、影響が大きくなってから考えれば良さそう。

  • 比較は喜びを半減する

そもそも全然違う良さを持ったプロダクトである限り、他者や他プロダクトを比較することはさほど意味がない。フォロワー戦略を生みがちだし、自分たちが良いと思うものを作ってればそれでいい。toC向け、toB向けで色々共通しない部分もあると思うが、真似てるとか真似てないとか自分で考え抜いた結果でないと陥りやすい無駄な議論だと思う。

  • 数値目標を立てない

これはすごい。KPIを作らないということだ。追うのは使われているかどうかだけ。数値目標を立てると、数字のために頑張ってしまう。達成できても終わらない。数字が的確なものかわからない。なら、測らなければ良い。使われて、お金を払ってくれる人がいればそれでいい。

  • ユーザーに調査しない

事前に欲しいものを聞いたりするのは、プロダクトの強みを他人に決めてもらうことと同じだという。告知する必要もない、聞く必要もない。調査をしているくらいなら、作ってリリースして、使われるかそうでないかを見ればいいだけなのだ。

戦わないためには、今まで当たり前にしてきた仕事を疑う必要がありそうだ。穏やかさはそこから生まれてくる。

穏やかな会社の仕事術

「生産性とは機械に使う言葉」 である。人は決められた時間あたりにどれだけの量をこなすかという尺度では測れない。頭が痛ければ仕事は進まないし、お腹が空けば集中できない。恋煩いで文章は頭に入ってこないし、別に何も悪くないときでさえ全然仕事ができないときがある。それが人だ。それを踏まえて、穏やかな会社ではどのように仕事を進めるのか、この本にはふんだんに書かれている。

注意したいのは、最初から理想形だったわけではないということだ。色々な試行錯誤を重ね、今のメンバーだからこそできるものなのだ。俺はほとんどの例に共感できたが、そう思わない人も絶対にいる。そういった不確実な会社の中で明日から突然何かを一気に変えるのはそれこそ穏やかではない。試行錯誤して自分たちにあった形を見つけていきたい。筆者達の会社Basecampではどんなことが行われているのか、参考になった。すぐできそうなこと、そうでないことであげておく。

すぐできそうなこと

  • 会議は最後の手段にする

可能な限り、適切な文章として残すべきだ。会議はチーム全員の作業時間を止める。会社の時間が止まるのだ。そうまでして話したいことでない限り、会議はしないほうがいい。正解とアジェンダがない会議は妙な疲労だけが残る。声に出して、止めていきたい。

  • 相互依存を減らす

「あの人しか知らない」「あの人に聞けばわかる」というのは良い部分も悪い部分もある。特別な専門業でない限り、基本あの人しか知らないを減らしたい。けど人数が増えてきたり、各々の作業が深くなるほど、生まれやすい。なので、可能な限り誰でも調べてフォローできる環境にしておくのが大事そう。完璧にはできないと思うけど、自分が調べてわかってきたことは積極的にみんなが見えるところに保存、見やすい形で共有するのが大事そう。

  • 会社のバージョニング

ソフトウェアは改善し続けるのに、なぜ会社は変わらないものとして考えるのだろうという発想は僕にはなかった。会社にはルールや安定を求めるというのは自分のやっていることと矛盾する。会社もアップデートしよう。この考えはすごい好きだ。継続的に良くしていこうという気持ちが一瞬で伝わるし、バージョンを眺めるだけでも良さを感じる。そして、バージョンをあげる基準とか考えると、勝手に理想を思い浮かべることができるという最高の仕組みだと思う。

  • 意見やアイデアは文章で公開する

相互依存をなくすにも繋がる話だが、みんなが読むべき事柄はチャットで済ませないのが大事だと書かれており、それは一ヶ月くらいたった今でも十分に理解できた。 ゲリラ的に議論が起こりがちな状態+それを全員で聞いていることが少ないという環境なので、その場の勢いで即答せずにきちんと考えて文章にすべきだ。伝えきれるかわからないけれど、悩み、問題、自分の考え方、対応方法などどんどん書いてまとめたい。その過程で自分の思考も整理されるし、みんなへ進め方を共有できる。

会社の規模に限らず、限られたリソースの中では 「仕事の質をどれくらいにするか分類すること」 に最大の努力をすべきであり、そのバランスをみんなで意識しあい、共通認識を作るのが今すぐやるべきだと思う。

すぐには難しそうなこと

  • 自分への質問は開講時間を設ける

人数が少ない今、最速のコミュニケーションは声を掛け合うことだ。背中を合わせていてもチャット上で話すことはあるが、伝えたいことを全て文章にするのはどうしても時間がかかる。まとまった時間へ一番妨害になる行為だが、せっかくなら声を掛け合いたい。一人で答えてきれない人数になったら考えていきたい。

  • カレンダーを共有しない(カレンダーテトリスと呼んでいた)

これも考え方次第だが、自分のまとまった作業時間こそが進捗を生み、会社を前に進める。カレンダー共有や予定調整というのは相手の時間を奪うことであり、どの会社でも普通に行われているが、電話するくらい恐ろしい仕組みだなと感じた。けれど、公開しておけば相手が空気を呼んでくれる、交渉してくれる可能性が増えるので、決してすぐ止めるべきものではないと思う。

  • 顧客と約束はしないこと、約束はしないという約束

toCやtoBかtoAで考え方が違うとは思う。約束すると、約束のための仕事をしてしまうし、約束に対してどうだったかという考え方になってしまう。約束したら守りたくなってしまうのが人なので。でも最初は誰かが欲しいと思っているものを作るのが正しいと思うので、どうしてもある程度の約束は生まれそう。会社全体へ影響しないようにしていくのが、今の最善策なのかもしれない。

  • 会社に引き留める制度は一つもない

福利厚生とか今話しても仕方がないが、Basecampでは会社に引きとどめるための制度が一つもないというのは驚いた。自分の体験で話せば、

 オフィスを過剰に快適にする
 社食を作る
 近くに済むと家賃を補助する

みたいなものも本来の目的は違うにせよ、個人が会社に行きやすい、残りやすい仕組みであり、個人の生活を奪いやすくするものだと考えられる。今はそんな綺麗事言ってる場合じゃないみたいなシーンはあるし、これも常に正しくはないけど、今からどうあるべきか考えておきたい。

これからの働き方

創業期は良くも悪くも文化がない。これから作っていくというか、自分の行動がそのまま文化に影響していくと思う。

  • ここぞというとき以外はきちんと生活とバランスをとる
  • 狭い視野でベストプラクティスという言葉を安易に使わない
  • 中長期の目標は立てない
  • 比較しない
  • 考えは文章に

は常に頭に置いて全力コミットしていく。文章にするのは使命だと思うので、このブログにしたのもその一つだ。
穏やかで冷静だが、ポップに。無駄ゼロまではまだ遠いけど、メリハリのある働き方を文化にしていきたい。


ブログ執筆時間:60分
読書所要時間:約2時間半
おすすめ度:★★★★★
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