道産子エンジニア

悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する

石原慎太郎の「天才」を読んだ

天才

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ロンドンで読み切った本の一つ。 これを読もうと思ったきっかけはこの動画だった。

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1時間あるが30分くらいでループしてるのですぐ観れると思う。

正直、よく知らないけど気難しそうなおっちゃんに見える石原慎太郎がここまで絶賛する人に興味が出た。あとは日本の政治について投票するくらいはしてるけど、歴史的背景などは全く知らないので、少しは参考になるだろうと思い買った本。本を読んでからまた動画を見ると面白い。トランプの話とかもしてるし。

名前こそ聞いたことはあるが 田中角栄 とはどんな人だったのか。それがわかる本だった。自分の政治への無頓着さが露呈する記事だがとっても読んでよかった。 自分たちは驚くほどに依存している国内移動の仕組みを根本的に作ったのはこの人だったのだ。 大げさかもしれないが、俺が住んでいた函館に空港がなければ俺の大学は函館にできてないだろうし、大学の恩師達に会うこともなかったし、今の会社を知ることもなければ働くこともなく、函館のマイルドヤンキーにでもなっていただろう。最近では新幹線も通り、飛行機が苦手だという人たちの流入出、東北からの旅行などでますます身近になっていくだろう。こうしたことはこの田中角栄が首相として奔走しなければ起き得なかったことだと思うと、普段から政治について何も意識していない自分が恥ずかしくなるほど大きすぎる恩恵を受けている。 件(くだん)の内容が気になる人はぜひ「日本列島改造計画」とかで田中角栄が行ったことを調べてもらうと、その所業の偉大さがわかると思う。歩行から馬車、馬車から自動車と発展した社会の未来を見据え、高度経済成長の波に乗せたのはこの人といってもおかしくないと今では思う。

この本の面白さは、田中角栄が書いていないのに田中角栄のエッセイのようになっているところだ。これも驚きだが書いているのは石原慎太郎で、彼はなんと芥川賞も受賞した文学者だ。産まれてからずっと政治家であった時しか見ていないので、てっきり政治家だと思っていたが(もちろん政治家ではあるが)根本は文学者なのだ。著書もかなりある。そして見事に陶酔してしまうようなエッセイだった。どこまでやっているかわからないが、見城徹が発行者なので「男らしい」見城節のような表現も垣間見えて、心揺さぶられる文章だった。

石原が言う、天才的活躍をした人でさえ、国家に殺され、世の中の不条理と戦い続ける中で犯した過ちが人生に刻まれていく流れはまさに劇的なものだった。見城徹が「憂鬱でなければ仕事じゃない」で書いていた 地上で太った豚にならず、山頂で凍える豹になれ とはこの人のことかもしれない。しかも天才と呼んでいる石原は田中の反対派だったのだ。自分の敵についてここまで賛美しながらかけるのは本当に尊敬しているからでしかあり得ない。そんなところもまたグッとくる。

田中角栄、かっこよすぎる。人として必ずしも全てが優れていたわけではないが、毒にも薬にもなれていない自分から見た天才は本当にかっこいい生き様だなと感動した。


女性的にはあまり面白くない内容(女性関係の不貞さ)も含まれているので、これを好きだと俺が書くこと自体、フェミニスト達には嫌われるかもしれない。なので一応、そういった部分について支持していないことを明記しておく。男がいいことも悪いことも含めた男らしいことへエンパシーを抱くこと自体、同じ生き物として当然の生理現象ではあるとは思うのだけれどね。 ※こんなことを書かなくてはいけないインターネットは少し居心地が悪い