- 作者: 藤野英人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/02/26
- メディア: 新書
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これは地元、北海道に住む友達とやっている、文通ならぬ本通で送られてきた本であり、 装丁や印刷方法をみてすぐに、「あ、武器としての〜の星海社新書だ」とわかってワクワクした本の感想。 ただ、タイトルには投資家の〜と書いてあって不信感を抱いた。つまりこの本のベストな対象読者というわけだ。
分析されたデータの図解が含まれていることと、文字が大きめでページに少ないので、スラスラリズムよく読める。 読書時間は合計4時間くらいだったと思う。久しぶりにKindleではない紙の本で読めてよかった。 このために購入した栞もなかなかいい。(二回しか挟まなかったけど)
いつもありがとう。これはいつもの読書感想と本通で行っていた付箋貼り返しの代わりのブログ。 付箋貼り返しというのはこういうのなんだけど、
思入れのあるコメントの付箋を剥がしにくいのと、そのままでは本棚に戻せないジレンマがあってやめることにした。笑 何かいい方法があるといいのだけど。まぁKindleでハイライトとコメントしてしまっているので麻痺している。
自分のこれまでのお金に対する考え方
堀江さんのツイートを見たか何かだったと思うけど、大学生の頃からお金は貯めるものじゃないと思い続けている。 使う目的がないお金を貯め続けることにはなんの意味も感じないから。自分は目的がないと貯めない。 お金がたくさんあることは確かにすごいことかもしれないけど、使い方が上手くないと意味がないなと思っている。 交際費に大量に使ってしまった時はやりすぎたなぁと思うことはあるけど、そういう時に限ってお金はちゃんと取っておいている。 本書では色々な統計データをもとに分析されていて、すごいなぁと思うのと同時に、人間の特性は数字でわかってしまうのだなと。
第1章の終わりに、
あなたには、「お金」よりも信じられるものがありますか? あなたには、「お金」よりも大切なものがありますか?
と質問が投げかけられていて、本を読みはじめた自分でもこの質問には十分答えることができた。 見城徹さんの本を読んでいたせいもあるけど、人との交流にお金をかけることを苦に思わないし、 貯金があることよりも、本当にお金を稼いで、使うべきことはなんだろうと考えながら消費することが大切だと思う。 この時点では、大半は自分の趣味や思考の広げるために必要なことには、躊躇せずに使うべきだと考えていた。 (ほらこうやってみんなでたのしくやるのもたまにはいいし)
本書を読み終わる頃に、少しだけ変化があったのでよかった。
清貧の思想と見城徹
第2章では痛烈に日本人のお金への考え方を批判する内容になっているが、自分はここまでイメージされている対象ではなかった。 どんなことをしてでも稼いだやつは正しい。これは見城さんの本、 「人は自分が期待するほど、自分をみていてはくれないが、がっかりするほどみていなくはない」の76ページにある、
ヒットしたものはすべて正しい
という言葉を読んでからずっとその考え方のままである。やりかたが汚いというのは結局自分ができないことを羨んでいるだけだと思う。 売れるという真実は何にも代えがたい成功の証拠だと自分は信じている。 それ以外はどんなに正しくやっても、間違いではないけど失敗なんだ。これを忘れると容易く他の成功を軽んじて、 成功の本質を見抜けなくなってしまう。そんな自分にはなりたくない。正しいことをして、正しく成功する。
ヘアヌード写真集であろうと、芸能人のスキャンダラスな本であろうと、金儲けのハウツー本であろうと、 ヒットしたものはすべて正しい。大衆が無意識に嗅ぎ当てた価値が、そこにはある。だからこそ、売れたのだ。
これに尽きる。
本書では清豊であることが上場会社の共通点だと書いていたが、まったくその通りだと思う。
自分の勤める会社について客観的にみたとき
第4章でまさか弊社の話が出てくるとは思っていなかったのでびっくりした。 色々な人がいる弊社はやはり人にフォーカスした企業文化が根付いている。これには自信があるし、強みだと思う。 いろんな先輩、同期、後輩と話をしていて思うのは、すべての人がいい会社だとは思っていないし、 自分のやりたいようやっている人もたくさんいるなぁと感じた。でもこれはいいことだと思う。 多様な考え方を集めて変化している会社だということだし、いざというときに、 みんなで協力して、同じ目標を達成しようと思ったらできるし、大企業になるほどたくさんの人が支えている会社なんだ。
藤田社長が独裁者なのになぜうまくいくのか?みたいなセンテンスでは、社員に成果をすべてあげているからだと書かれている。 確かに社員への分配は結構あるように実感してるし、人と人がコミュニケーションする場を多く作っている。 それでも、しっかり分配の優劣はついてるから社内の競争力は下がらないし、みんな真面目に仕事をしていると思う。
エンジニア的には社内交流みたいなのが苦手な人もいるのだけど、結局どうしても嫌な人というのはあんまりいないように見える。 なぜなら、なにか不満や意見があれば次々に人を伝って組織が流動的に対応していることが多いから。 制度は新しくできたり、よくなければ消えていったりと絶えず変化している。自分は変化が大好きだからいい。 広告営業の文化が根付いているので、まだまだエンジニアが最高に心地よい環境ではないかもしれない。 それでも、あきらめずにみんなで変えていこうという姿勢に意味があるよなと。
100%誰かにとっていい空間というのはなかなか難しいし、そういうめんどくささも全部含めて会社なのだな。と、 この本を読んで再認識できた。
成熟しきっていない組織だからこそ、登っていく最中だからこそ、難しいことを解決しながらうまくやっていきがいがある。 ただし、問題はたくさんある。
プロダクト志向すぎるのはダサいという気づき
この本で二つの大きな学びは、プロダクト志向すぎる大企業が多いということと、 大企業の株価が出版当初の2013年には下がり続けていたということだった。
もっともエキサイティングなセンテンスは173ページからのソニー批判だと思う。 もちろん、ソニーはここで叩かれているほど悪い会社というわけではなく、素晴らしい技術力があると思う。 ただ、企業文化が違っただけなんだと思う。そこさえ良くなればもっともっと到底叶わない会社になるんだろうなと。 最近の話で言えば、SonyのExperiaZ3を使っているけど、めちゃめちゃいい携帯だもん。 アプリケーションレベルでの不満は多いものの、ハードウェアとしての完成度は、Googleも負けていると思う。 アプリケーションとのマッチングもバランスが取れているという点ではNexus5を推したい。
脱線してしまったけど、コムデックスというIT、エレクトロニクスの展示でソニーのプレゼンがプロダクトの話ばかりだった、 他の名だたる有名IT企業はビジョンのプレゼンだったという批判のお話なのだけど、日本人の職人気質なんだろうなと思う。 たしかに質のいいものをしこしこ作り上げるのが得意なのだけど、それに集中するあまり、全体を通じてもっと大切なことが抜けている。
これは最近の自分の身の回りの環境でも良くある話で、エンジニア界隈でみなそういう風潮があるように感じた。 たしかにいいアプリ、いいプロダクトを作るのはすげー重要なんだけど、それに囚われすぎて、 消費者に対して何をしたいのか?何を提供したいのか?この世界にどんな価値を作りたいのか?がおろそかになっている。 エンジニアは割と、「自分さえよければいい」タイプの人が多い。だから、自分たちの世界でいいものが正義になる。 もちろんそれで本当の価値を作ってしまうのがGoogleとかだし、間違ったやりかたではないと思う。
けれど、会社やサービスの目標が「高品質なプロダクトを作る」だったらどうだろう? 自分だったら、はぁ…となってしまう。誰かの何かの変えて、価値を提供するのが最大の目的だ。 消費者はそれにお金や対価を払うんだ。 いいものであることは価値を提供することにつながるけど、いいものを作ってもかならず価値を提供できるとは限らない。 ここを忘れないエンジニアになろうと気づいた。
そして大企業である弊社は日々変化することをやめてはいけない。現状維持はつまり成長が止まっていると同じだ、 と藤田社長もこの記事で書いている。
いいものを作り続けることはそれだけでもかなり難しい。けど、それだけでは成長できないよな。
自分は、自分の作っているサービスを通じて、使ってくれる人たちに何を提供したいか。ここをしっかり考えなきゃいけない。
広告とかゲームは目的がはっきりしているから割とわかりやすいけど、コミュニティサービスは全然違うなぁとふと思った。もちろん分かりやすいことを批判しているわけではないです。むしろ、しっかり考えなきゃいけなくて焦っている。
自分の人生の楽しい部分を共有したり、集団のコミュニケーションを支援するFacebook、なんとなく緩い繋がりで言いたいことが言いやすいし、人の本音を見るだけでも楽しいし最新の情報が集まるTwitter、写真を撮って残す事を誰でも簡単に美しく楽しくできるInstagram、どれもやっぱり使ってくれてる人に何かを提供出来ていると思う。
何となく使ってしまうというのは、それだけの価値を無意識に感じている証拠なのだろうなあ。
最近はアプリケーションの質を高めること、使いやすい、便利である、違和感のない、カッコいいことを主軸に考えているけど、本当に提供したいことは何かを決めないとから回るだけなのだろうなと。
もっと使う人をことを考えて何を提供したいか考えると決めた。
これまでお金を稼いで、自分の生活を豊かにするというのが根本の考え方だったけど、本書を読んで、 いいものを作り、いい循環を生み、対価をもらい、またさらにいいものを作るために自分や他者にお金を使う。 そうすることで周囲の人たち、会社、業界、経済が良くなったらいいな。そういうふうにお金を稼ぎ、使う。 これくらい少しだけメタにお金へのイメージが広がった。お金は欲しいし、そのために全力で働くのはこれまでとおなじ。 けれどちょっと考え方を変えるだけで、こんなにお金を稼ぐことが楽しくなって、 嫌なイメージがなくなるのは今回の読書の良かったところ。
関係ない話
このエントリをみて、 自分は普段本一冊程度のブログを書いているので、IO比は1になる。毎日書くつもりはないが、ジャンルが近い本などを使って、 もうすこしIO比をあげた内容のものが書きたいなあと思ったり。