道産子エンジニア

悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する

島田裕巳「芸能人と新宗教」を読んだ

芸能人と新宗教 (イースト新書)

芸能人と新宗教 (イースト新書)

一年くらい前に島田裕巳の本に出会っていて、宗教の研究って面白いなぁと知っていた。

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この前話題になっていた千眼 美子(法名/せんげんよしこ、本名/清水富美加)の出家騒動を受けて新書が出ていたので、芸能人と宗教の話は面白そうなので買った。 前回同様最初に断って置くが、僕自身はこういった強く信じている宗教はなく、この記事でも宗教の宣伝やステマを行うような目的は一切ない。 宗教と聞くとすぐに「きな臭い」と感じてしまうのは何故なのか? どんな宗教がどんな影響を及ぼして今に至るのか?その実態はどうなっているのか?そういった小さな疑問を知りもしないで判断したくないので興味を持っているということを前提としている。

また、芸能プロダクションについてどうこう言う記事でもないことを明記しておく。

それでもきな臭いと感じるなら読まない方がおすすめです。感想自体はかなりさらっと書いているので、特別な用語などは出てこないようにしている。

新宗教 is なに

聞きなれない言葉なのでしっかりと説明があるのが本書の親切な部分。学者が書いているという信憑性はこういうところに現れるのでよい。 新宗教とは既成宗教に対して作られた言葉らしい。他にも、比較的ここ最近(100年程度?)できていて、出家しない 在家教団である宗教を呼ぶらしい。 既成宗教には聖職者が存在し、新宗教には存在しないことも特徴として挙げられている。幸福の科学*1における出家は特殊らしく、聖職者になること出家と呼ぶのではなく、生活態度から全て信仰を捧げることを出家と呼ぶらしい。(かなりややこしい) また、専門家たちは 新興宗教 と呼んできたらしいが、新興という言葉には相手を見下すニュアンスが含まれているため、 新宗教 と呼ぶようになったらしい。

芸能人と宗教の相性

本書の主張で 芸能人という仕事は成功しかない。無名な芸能人は芸能人ではないので、有名であることが芸能人の必須条件である。 とあったが、なるほどこれは確かにと思った。そして、この本で一番のミソが芸能人は何故宗教にハマるのかという部分だ。結論から言えば、 「宗教は成功への道筋を示してくれるから」 だそうだ。なにをいってんだ?と思うかもしれないが、芸能人として成功するには?ということを具体的に示している方法論はない。そして、基本的に宗教は芸能に関わらず、 信仰することであなたは幸せになれる と説いているものがほとんどであり、その信仰の仕方は具体的に説明されているのである。

一見、滑稽に感じるかもしれないが、信じるというのはそう言うことだと思う。言霊というのは自分たちの生活で感じるときがあると思う。それは自分の言葉を信じて行動して、小さな行動の変化を生むからだろう。宗教はそこをうまく使っているのだなと理解してきた。かなりオカルティックだが、実際に入信している人もいることを考えれば、完全に否定はできないのではないだろうか。

芸能人に隠れ信者はいない

これ結構驚いた。書いてある内容を読めば確かにそうだなと納得した。信仰が強いのにそれを隠す必要はないから。信仰が強いけど周りの目を気にするとういのは矛盾している。昔のように異端狩りのようなことがない現代ではむしろ公言したほうが徳だし。久本雅美などは良い例だと思う。

だから、芸能人で隠れ信者はいない。

日本人は無宗教か

日本人は高齢になるほど宗教観が強くなっていくらしい。日本人は無宗教という話がよくあるが、嘘だと思う。無宗教ではなく無頓着なのだと思う。次第に宗教というか自分の中で信じるものが形成されて、成熟に向かうのだろう。


全体的に日本の新宗教に関する話を知りたければ、創価学会の本が面白いと思う。 芸能人と宗教の相性については自分が芸能人と接することがないので実感がないが、なるほどね〜という感じだった。 そもそも話題に乗っかって自分の研究や宗教に知ってもらうために書かれた新書であろうと思う。

最近はスッと会話の中で宗教の話題が出たときの人の反応を見るのが面白いなと感じる。それと、やはり多くの人があからさまな嫌悪感や見下したような印象を持っていることが多いが、仏教やキリスト教も同じであり、新宗教への理解が浅い世の中なのだなと感じることが多い。自分の先祖を拝むこともまた、信仰には変わりないので、良い悪いというのはないがもっと冷静に考えたほうがいいと思う。

自分が信じているものは自分にしかわからないし、それが宗教であろうが何かの神であろうが、それは他人が否定していいことではないと思う。

読書所用時間:約3時間
オススメ度:★★★☆☆

*1:名前とは裏腹に自然科学的信念はなさそうだが