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亀山早苗「人はなぜ不倫をするのか」を読んだ

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

人はなぜ不倫をするのか (SB新書)

  • 作者: 亀山早苗,上野千鶴子,丸山宗利,竹内久美子,島田裕巳,福島哲夫,宋美玄,山元大輔,池谷裕二
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2016/08/06
  • メディア: 新書
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10月に入籍なので、まだ結婚してないのに何読んでんだって話。

どんなことがあるかわからない人生では、望ましくない未来について

  • 起きないようにどうするか
  • 起きてしまったらどうするか

を考えておく必要があると思う。不倫については前者で、起きないようにすることが重要だ。そのために、人間の不倫という現象について学ぼうと思ったのだ。不倫についてのルポ的なものはたくさんあれど、不倫はどうして起こるのかをインタビュー形式でまとめたこの本は、登場してる学者が面白いので読みたいと思った。しかし、筆者の基本的なスタンスが「不倫は起こり得る、生物的に避けられない」のような感じであまり好きではなかった。どちらかといえば中立的に淡々と述べてほしい気持ちがあった。

自分が日本人なので、日本の文化で言えば、法律上、罪になることはしないほうがいいに決まっていると思う。でも逆に考えると、法律は人間は間違いを犯すから、あえて罰を与えることで抑制していると割り切っているとも感じる。自分がもし相手に不倫されたらと想像すると、死ぬほど悲しいし、怒りが込み上げてくる。そう思うなら、起きないようにするには自分と相手がどのように考え、行動しないといけないのか知っておくべきだろう。

一気に自分の感情が溢れてきたが、忘れてた本の紹介に戻ると、亀山早苗さんというライターが、不倫についていろんな学者にインタビューしてみたという本だ。ジェンダー、昆虫学、動物行動学、宗教学、心理学、性科学、行動遺伝子学、脳科学の八つの視点で書かれていて、そのうち宗教学は島田裕己、脳科学は池谷裕二だったので読む!と決意したのだ。

このお二方の本は本当におもしろいものばかりなのでおすすめ。

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さて、先ほどあげた視点のインタビューの中で気になった点があるもののメモを書いておく。

不倫は身近にあると警戒する

不倫するのが当たり前論調だった。結婚するから不倫する、不倫は男の甲斐性など男と女はこういうものだという目線やこれまでの話を紹介していた。よくある例として

女性は、本当に親しい友達が不倫しているなら応援するんですよね。そこがおもしろい。不倫はどの立場から見るかによって、見方が変わってきます。

というのは確かに聞いたことも見たこともあるので恐ろしいと感じた。人の「行為に対する意識」は自己肯定感を満たされると正当化されてしまうバグがある。巷の作品ではそういうシーンが「人間らしさ」として美しく描かれてしまうし、どうしようもない行いをおもしろいと思ってしまう気持ちもあるだろう。こういう身近なものだとわかった上で、それでも人を傷つける行為だと理解しないといけない。作品の中ではいいが、現実では辛いばかりだ。

子殺しのない人間は年中発情している

これも論点がおかしいような気はしているが、類人猿などより人間に近い動物の行動なので参考になるかもしれない。猿は人間と同じように集団行動するが、人が大きく違うのは「年中発情している」ことだそうだ。猿の集団では子殺しの生態系があり、妊娠した猿が別な集団に映ったとき、生まれた子猿が集団内のどのオスの子でもない場合、ライバルになる可能性があるので殺されるらしい。猿は授乳中は発情しないので、間引かないと自分たちの集団の子が産めないからだという。人間はそれに適応?したのか、いつでも発情していていつでも子を産める母体が生存してきたのかもしれない。これが不倫へと繋がる第一歩になる可能性だってあるので、欲情とその対処は真面目に考えないといけない。夫婦になれば「いつでもできる」からこそ、どのようにいつするのか、きちんと考えたい。

例えば、疲れているから自分は別にしたくないみたいなときでも、それが何度も続けば欲求不満になるだろう。けれど気分の問題も大事だが、どのようにムードを作っていくのかというのも重要だ。別々に家を出てワクワクするデートをするとか、いつもよりドキドキする何かをしてみるのは良いと思う。家なら衣装や照明を変えるとか、美しい体をキープするとか色々あると思う。まずは、どうすればムードが出るのか一緒に話してみるのが良いと思う。

宗教と不倫

興味津々で読んだ。やはり島田さんの中立的な論調が好きだ。探究心は一方向であるべきではないと思うので(この意見自身が一方向であるパラドクスはある)、良し悪しを理解してから自分によっての正しい答えを持ちたい。冒頭の文章がよかった。

そもそも「不倫」をどうとらえるのかがむずかしいですね。「不倫」という言葉自体が、現代の日本における固有な事象を表しているわけですから。不倫という概念を「倫理にあらず」ととらえれば、それは宗教とは関係なく、単に道徳的・法律的な概念なのかもしれません。

こういう、定義から始めるのも好き。最近キングダムを再読してて姦通という言葉が出てくるが、第二次世界大戦前の日本の法律にもあったそうな。それは妻を所有物として考えていたので、妻は財産だから存在した法律と言える。そこから転じて配偶者以外と関係を持つことは悪だという文化が日本に根付いたようだ。イスラム諸国でも「石打ちの刑」というかなり厳しい処罰があるそうな。それ以外にもキリストなどがある。一方で一夫多妻制をとるところもあるので、文化のありように大きくされる部分はある。僕らは宗教を選ぶというか何かを信じる自由があるが、実際は自分の思考は生まれた場所、育った環境に大きく左右されるだろう。文化はどうしてもそうしてしまう遺伝子ではないが、争うには強力な自制が必要になってしまう。

朗報というわけではないが、島田さんが言うには宗教はどんどんなくなってきているようだ。それは信仰がなくなっていくというイメージではなく、信じるものが現実世界や人間の信用そのものへとシフトしていると俺は考えている。

島田さんがあげる日本(人)の特徴は

  • かつて結婚は生活のためのものだった
  • 変わり身が早く、宗教心がない
  • 宗教がない=戒律がない=人のキャラを信じる
  • キャラのイメージが壊れると批判する
  • 神よりも社会が強い
  • 社会が学校化している

というもので、これらが不倫という行為を叩きやすい社会になっているとのこと。宗教がないので罰するのは同じ人であるのが怖いことであり、昔から存在する行為ではあるが、現在は生活のためなどの理由がないので一層恐ろしいだろうと述べている。本書のテーマである「なぜ不倫をするか」という部分には触れてないが、過去と現在ではその存在意義が違うということが理解できてきた。不倫という行為に求めるものは昔と違い、より欲望に近い理由となりつつあるが、それを罰する仕組みは刑だけでなく人や信頼など厳しくなっていると言える。

心理学と不倫

詳しい内容は書かないが、

不倫はずっと一緒にいるわけにはいかない。(中略)ある意味では「いいとこ取り」の関係

というのは、確かにそうなのだろうと思った。人は足りないものを求める。最初は恋人だから感じた何かは夫婦へ変わり、徐々に色褪せていくのかもしれない。持論では努力次第だと思っているが、良くも悪くも人は慣れる生き物なので、いついかなるときも出会ったころと変わらないということはない。人は興奮だけを求めて結婚しない。しかし、その甘美さ故に、依存してしまう。また、欲しいと思ってしまう。それを浮気相手が満たせるときに不倫へと変わるのだろう。この不安が全くない人はいないと思う。ないとしたら、それは馬鹿なのだろう。未来について予測できるからこそ人間であり、備えられるからこそ知性なのである。小動物でも冬支度をする知恵はある。惚れ直してもらえる自分でいること、容姿だけではない内面の美しさを磨くこと、何よりも相手をおもいやる気持ちが大切だと思う。

もう一つ面白いと思ったのは、現代心理療法では不倫への気持ちを治すには「アタッチメント・コクーン」というものを使用するのがいいらしいことだ。繭状の空間で幼少期の原始的な感覚を呼び起こし、他者への想像力を磨くというものらしい。例えば、親と関係が良くない記憶が強いときは、当時の自分へなんと助言するか、親の良いところもあったのではないかなどを思い出していく作業をするらしい。不倫はしたくないが、この心理療法は体験してみたい。

すべては脳のバグ

この章の前に性科学(特にセックスの観点)がメインの章や行動遺伝学から考えたインタビューなどもあり面白いが、それらを忘れるほど面白かったのがラストの章。この最後の章は池谷さんで脳科学者が不倫を「脳のバグ」というのは最高だった。

「人は本来、不倫をするものだ」と考えるのは違うと思います。なぜなら人間が生きる目的を遺伝子を残すことだとすると、ヒトの場合、不倫によって遺伝子をあちこちのばらもくより「これぞ」と決めた相手と寄り添ったほうが、遺伝子をきちんと残せる確率が高まるはずだからです。

これは自分の確証バイアスかもしれないが、確かに自分や家族のご飯を用意しつつ子育てをしていて、他のパートナーを作っていくのはどう考えても効率が悪い。知性があるからこそ、合理的に行動するのがより人間らしい。野生には一夫多妻制で生きる哺乳類がほとんどなようだが、脳にある「ヴァンプレッシン受容体」の量によってそれが分かれることがわかっている実験があるそうだ。かなり驚いた。この受容体を増やすと哺乳類は一夫一妻制になるらしい。

恋は脳のバグ と述べており、それは動物として恋愛よりも育児本能が先に発達するので、愛情はもともと親から子供へ向けられるが、繁殖のための交尾だけでは納得できないから異性にも愛情があるのだと「勘違い」してきたのだろうということだ。こういう納得できる理由を後付けをすることを「錯誤帰属」と言うそうだ。人間の進化の歴史は最高のバグを生み出し、それによって恋愛や子育てを楽しめるようになった。たとえ、勘違いだとしても幸せに人生を進められるなら俺は良いと思う。脳から見ればすべての行動は無意味な化学反応の結果であると言い切る池谷さんの無常感に感心しつつ、それでもリスクを背負って不倫をしている人はいるし、楽しんでる人もいるというのは確かにおかしなことだ。社会で生きているならリスクの大きな行動をするより、たとえ脳の勘違いでも愛していると思える人と過ごしていきたい。


どうでもいい話をすると、俺は前川「裕1」、池谷「裕2」、島田「裕3」(ひろみ)だなと思った。 読んでみて、人間の特性を良く知ることはこの先起こるかもしれない問題を「予測可能」にする。単純にいえば相手が寂しいと思っているなとか、不満を感じているなということを 想像できる ようになる。ここがまず大事だと思う。そして、それをすぐにでも一緒に考えて、どうしたら幸せに暮らしていけるだろうかという話し合いができる環境にしておくことも大事だと思う。不倫相手は自分がいえなかった本音を吐き出せるから、不倫できるのだ。それを家庭内に収めることができるのなら不倫は起こらないだろう。人間はとにかく支え合っていかないと脆く、儚いものだと思う。本来は「支え合っている」と思うことさえおかしくて、支えることが当たり前だと認識して生活していくべきなのだろう。

読書所要時間:約4時間
おすすめ度:★★★☆☆