道産子エンジニア

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サマセット・モーム「月と六ペンス」読んだ

月と六ペンス (新潮文庫)

月と六ペンス (新潮文庫)

ググってみてからゴーギャンが作品のモデルだと知った。ゴーギャンの本物の作品は一度もみたことがない。ゴッホの作品はいくつかみているので、ポスト印象派の作品も好きだなと感じた。とはいえ、自分の中でポスト印象派の作品とは何かという部分についてあまり答えがない。

ロンドンいったときには印象派の絵に魅せられたが、とにかくこの時代のフランスの画家たちがもつ情熱が、そのまま絵に焼きついている気がするのだ。芸術について無知蒙昧の自分だが、実際の絵をみた印象なら伝えられる。どうすごいかはわからないが、わからない門外漢でも何かを心に留めてしまうほどの力を持っていたのは確かだった。

名画に対する俺の稚拙な感想はこの辺にしておいて、読みはじめから、読み終わるまで、とっても不思議な小説だった。物語にもエッセーにも読める気がするし、伝奇やホラーのような印象さえ受けてしまうのだ。

一人称にして語り部の「わたし」とストリックランドの奇妙だが心地よいやりとりがクセになってしまう。

他人からみて幸せな生活を送っていたストリックランドが全てを打ち捨てて盲信する「美」とは何か。芸術とは何か。哀れな男の生き様を透かしてみるそれに、魅せられてしまう。そんな一冊だった。晩年を過ごしたタヒチに足を運びたくなってしまった。

また個人的には「わたし」は芸術についてわからず、狂気的な生き方をするストリックランドを罵りながらも、楽しんで小説にしていることこそが、この本の言わんとしていることだと感じた。それは、何かに取り憑かれるようにして、自分が人生でやらなければいけない「何か」を追い求め続けることであり、「わたし」にとってはそれが「書くこと」であるのだと。

月(=夢)を目指すものが握り締めるのは、今日を生き抜く六ペンスなのかもしれない。


タイトルからもわかるがイギリスの描写が多く、細かい表現からも愛が伝わってくるのがよかった。最後の場面はカムデン・ヒルなので、カムデンのビールを飲みながらまたいつかこの本を読みたいと思った。

読書所用時間:約5時間
オススメ度:★★★★☆