道産子エンジニア

悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する

SHIROBAKOを見た。

押井守ファンレター記事を書いた直後に見ていて、6話で瀬川さんがビューティフルドリーマー好きっていう回がタイムリーにでてきたのは興奮した。アニメ業界は知らないのでこれがすべてではないだろうし、描かれている現場が嘘か本当かわからないけど、アニメ制作について少しでも知れるのはよかった。アニメ制作の裏側を描きつつ、それらの凝った描写を本編にも入れていて、アニメの見方を変えさせてもらえた。巷で噂になっていてからずいぶん時間が経ってしまったけど、感想を書いた。

これを見て気がついたプロディーサー持論

アニメ制作やテレビ番組制作のプロデューサーと弊社プロデューサーの決定的な違いが少し見えた。それはものを作る作業に自分も入って、実際に作ってみるという下積みを全然していない人が多いというところかもしれない。やっぱプロデュースするなら実際に作らなきゃ気持ちがわからないのでは?などと思う。交渉、スケジューリング、分配、連絡、議論とか色々参加していたとしても、作ってないとリアリティがないよなぁって思うんだけどな。

SHIROBAKOの良さ

毎回人間関係の難しさとものづくりの楽しさをバランスよく描かれているところだと思う。「社会に出て働くこと」を新人だけでなく、中堅、ベテランの人にも伝わるような普遍的なドラマとして描かれていて、とてもほっこりする。そして誰もがぶち当たる「何のために働く論」を新人みゃーもりに重ねつつ、一生懸命働くことで無意識に成長している姿も描いている。ものづくりの現場で働く人たちに強い共感を与えることがこの作品の、この作品だからこそいいところなんだと感じた。

毎回感動するようなシーンとそれに合う一言が飛び交うのだけど、「当たり前のことを当たり前のように言う、やる」ことがこれほどカッコよく、強いメッセージを伝えてくれるんだと再認識する。それはなんだか、四文字熟語の成り立ちをドラマチックに、歴史と一緒に勉強したときの感動に似ていた。アドベントカレンダーでもほとんどの人が誰か強い印象のあるキャラクターを押しているというより、「自分にとってよかった、共感できたこと」を書いている人が多いところを見るとこの作品の「当たり前のことをやる」ことへの細部のこだわりが見える。

SHIROBAKO Advent Calendar 2015 - Adventar

エロと暴力を描かないアニメだって面白い

そんな自分はなにが熱く感じただろうか?

俺は「エロと暴力」を見たくてアニメや映画を見るタイプなので、正直SHIROBAKOは感情の起伏が少ないものだった。けれども、格闘や戦闘で描く暴力ではない 「コミュニケーションや言葉の暴力」 とか、体の曲線や衣装で表現するエロスではない 「人間性や性格のエロス」 が描かれていてグッときた。つまりは描写だけで感情を揺さぶるのではなく、ストーリーや人間ドラマでエロや暴力を表現することもできるのがSHIROBAKOらしくて好きだった。

自分の職業をメタ認知するのは面白そう

SHIROBAKOの水島努監督は作中の木下監督に何かを重ねていたのか気になる。監督が監督をイメージするときって何を考えるんだろう。自分を映すのか、理想を映すのか、全くの別人にするのか。監督は全体のシナリオを自分の解釈を加えて作品にする人だと思う。木下監督のいいところは「子供心」みたいなのを絶対に忘れていないところだと思う。大人の世界をリアルに描く作品だからこそ、すごく監督の「子供っぽさ」が際立ってかつカッコよく映っていた。

リアルとアニメのバランスがいい

公式Twitterのこの一枚はけっこう好き。作りながら、自分たちも同じように苦楽を味わっている雰囲気が溢れ出していていい。

— 2クールだけど一人一人のキャラが良くて楽しかった。ものづくりの苦しいけど楽しいところを存分に描いたいい作品だった。アニメ制作について少し学べたので、何気なく見ていたアニメの細部に宿る情熱をこれからは感じられるようになるかもしれない。