道産子エンジニア

悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する

ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー   「小さなチーム、大きな仕事 働き方の新スタンダード」

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

  • 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/01/11
  • メディア: 単行本
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オススメされたので読んでみた。 自分は今の会社に入ってから、10人以下くらいの本当に小さいチームで開発を経験したことがない。そのときそのときの注力事業に参加していたため、人はどんどん増えるフェーズしか体験したことがない。ガレージで起業するアメリカ人たちが成功してきた話はたくさんみたことがあるが、それを体験したことはない。目の前で盛り上がっていくスタートアップは何社かみてきた。

もし自分がその立場になったときどのように振舞うべきかということが明確に書かれており、2時間もあれば読み終わるその分量からもシンプルで身軽であることが重要だと伝わってくる本だった。

計画は予想に過ぎない の説であった

ときには「今からこの方針でいこう。このほうが今の状況に合っている」という必要がある。

という言葉はとても大事だと思っていて、変化や成長期に「これだけ守れば大丈夫」なんてものは存在しないが、決断するための軸を自分の中に持っておく必要がある。ほとんどのことは「決める」>「やってみる」>「振り返る」>「また決める」の繰り返しだと思う。柔軟に生きていくには臨機応変な思考が必要だと思った。これは大企業にいると鈍っていくような気がした。

シンプルに保つ手段

Fictions

Fictions

上記の技術書典に出した拙著の中で「その機能本当に必要ですか?」という記事に、 機能追加や仕様変更による製品の複雑化を回避するには、「やりたくないことがある」と意志を伝えよう と書いた。これを読んでる人は自分プロダクト開発でどのようにしているだろうか。本書にも似たことが書いてあり、

信じているものが何かをわかっていなければ、すべてが議論の対象になってしまう。すべての議論の余地がある。しかし何か拠って立つものがあれば、決断は明らかになる。

と言う。議論の対象にしない、議論の余地を与えないために製品開発への信念をもとうと言っている。小さなチームで始めるとき、これは絶対にやっておきたいなと思った。
また、

物事がうまくいかないと、人はその問題にさらに多くの人、時間、資金をつぎ込もうとする。だが、そうすると問題が大きくなってしまう。進むべき正しい道は逆の方向、すなわち減らすことだ。

ともあった。これはどんなチームにも一度は起きたことがあるんじゃないだろうか。新卒3年目くらいまではこれにすごく悩まされた。この考えを意思決定者にも浸透させないといけないからだ。こんな時はとにかく「やること、考えることを減らそう」と一言伝え続ける人になっていきたい。

生産性をあげる

会議の無駄、問題の分割などそうだよね!と思うことがたくさん書かれている良い章なのだが、TODOリストについても改めて考え直したくなることが書かれていた。

長すぎるTODOリストは終わることがない

先にもあげた通り、TODOリストが膨大になっているのはやらないことを決めていないから起きるのだと気が付いた。

「これは3、これは2、これは1、これは3」と言ってはいけない。そのようにすると必ずといっていいほど、優先順位が高いタスクが山ほど生まれるはめになる。これは優先順位づけではない。そのかわり、視覚的に優先順位をつける。もっとも重要なことを一番上に配置する。次に重要なことはその下。こうすれば、もっとも重要なことは一度に一つだけだ。それで十分だ。

まさに手伝っているプロジェクトでこの現状が起きたばかりなので、数値をつける優先順位づけは今後しないだろうと思う。数値が役に立ったことを一度も見たことがない。細かく分解し、時間を短くし、Step by Stepで上から順にこなしていく。何事もこれしかないのだ。

チームの作り方

今年一年は「大企業での採用はこうやるのがいいかもしれない」というのが見えてくるくらいコミットしていた。けれど、小さなチームでは全く通用しないのだろうとこの本を読んでわかった。

  • 会社を「知人のいないパーティー」にしない
  • 文化はつくるものではない

この二つは心に刺さった。臨機応変に、素早く、効率よく、最速で物事を進めていくスタートアップの段階では本当に大事なのだろう。考えてみれば大企業のようにリファラル採用以外でも人を大量に取っていれば、全く考え方や行動がわからない人が入ってくる可能性がゼロではない。全方位囲まれた死地を生き抜くスタートアップの戦場において、背中を預けられないメンバーがいることはとてもじゃないが怖くてたまらないだろう。そいういう意識が今までなかった。すごく勉強になる。当たり前のように感じていたことは環境によって全く違うのだよなと再認識した。

また 従業員はガキではない の節で 「多くの会社では何をするにも上司の許可がいる。クソをしに行くのに許可証が必要でないのが不思議なくらいだ。 と書いてあって声をだして笑った。本当に自分の感覚は麻痺しているのだなと思った。物品購入、経費精算、〜〜申請など無心でこなしていた業務が多すぎる。

何にでも許可を必要とする環境は「何も自分で考えない文化」をつくる。

これは間違いないと思う。そうならないように、どんな環境でも「なんでも自分で考える文化」を作るために行動していきたい。


何度でも読み返そう。人はすぐに忘れてしまうから。

読書所要時間:約2時間
おすすめ度:★★★★★